2006年11月25日

税制改正後のMBOスキーム

告知した通り、税制改正後のMBOスキームについてまとめます。

以前のエントリでMBOの際にTOBの後、完全子会社化するスキームで税制改正により産業活力再生特別措置法(以下、産業活力再生法)を使わなくなると書きました。
ではどうなるのか?ということまではあまり書いていなかったので、いくつか事例が出てきたし、これを機会にまとめておこうかと思います。

結論からいうと、手法は二つ。特にスキームの名前があるわけではないのですが、便宜的に名前をつけると
@端数株式交付方式
A全部取得条項付種類株式交付方式

@は東芝セラミックスのMBO、キューサイのMBOで用いられた手法、
Aはレックス・ホールディングスのMBOで用いられた手法です。

さて、少し話がながくなりそうなので、目次をつけて説明します。流れは下記の通りです。
1.税制改正で何が問題となったのか
2.@、Aの手法についての詳細
3.補足


1.税制改正で何が問題とあったのか
MBOではTOB(株式公開買い付け)後に完全子会社化するため、現金を対価とした株式交換で少数株主を締め出す方法が主流でした。しかし今年度の株式交換・移転税制の改正(2006年10月1日以降適用)により、従来の手法で実施した場合は税負担が発生することになりなりました。税負担が発生すれば買収価格にも影響するので、MBOの実現ハードルが上がることになります。そこで課税を回避する必要性が出てきたのです。

税制改正前の具体例を示しますと、ポッカコーポレーションやすかいらーくの事例では、産業活力再生法を用いていました。すなわち、まず経営陣やファンドが特別目的会社(SPC)を設立し、SPCがTOBで対象会社の発行済み株式の3分の2超を取得し、その後に産業活力再生法を使って現金を対価とした株式交換で少数株主を追い出し完全子会社化していました。

しかし税制改正で株式交換・移転税制が組織再編税制に一本化されたことで、少数株主に対して現金など買収者の株式以外を対価とする株式交換を実施した場合、買収対象会社の資産に一定以上の含み益があれば、評価損益に対する税負担が発生することとなり(具体的には具体的には土地や有価証券などの資産を時価評価し、含み益と事業活動で得られた利益と合算。そこから会計上の収益・費用と税制上の益金・損金の差を調整し、課税対象となる所得を計算。法人税などを課税する)、課税を回避する必要性が出てきたわけです。仮に期間利益が赤字でも含み益で黒字になり、税金を払わなければならない場合もでてくるでしょう。また資産を売却せず、キャッシュが入らない状況で税金だけ支払うこともあるでしょう。多くの含み益を持つ企業にとってはMBOというスキーム自体を再考せざるを得ない可能性があるわけです。


2.@、Aの手法についての詳細
@端数株式交付方式
10月2日に発表したキューサイと、10月31日に発表した東芝セラミックスのMBOで用いられたスキームです。
SPCが買収対象会社の株式の3分の2超をTOBで取得するところまでは従来と同じで、違うのはは株式交換の際に現金ではなくSPCの株式を交付する点です。この際に株式交換比率を調整し、少数株主には1株に満たない端数株式を交付し、その後にSPCが端数株式を現金で買い取ります。この方式なら、株式交換の際に少数株主に交付するのはあくまでもSPCの株式なので、税制改正の影響を受けないとみられています。

A全部取得条項付種類株式交付方式
11月10日に発表されたレックス・ホールディングスのMBOで用いられたスキームです。
SPCがレックスHDの株式をTOBで取得するところまでは同じ。違うのは、TOB後に株主総会でレックスHDを種類株式発行会社に変更し、発行済み普通株式に全部取得条項を付ける点です。この条項があれば会社は株主の同意なしに自社株式をすべて取得できるため、株式の全部取得と引き換えに、株主に別のレックスHD株を交付。このとき、少数株主には1株に満たない端数株式が交付されるよう単元を調整し、最後に現金で少数株主から端数株式を買い取り完全子会社化します。なお、この方法では合併や株式交換を使っておらず組織再編税制の枠組みから外れます。


3.補足
代替手法はいずれも最終的に端数株式を使って少数株主に現金を交付する点は同じですが、一方は株式交換という方法で少数株主にSPCの株式を交付、もう一方は全部取得条項付種類株式という手法で買収対象会社の株式を交付するという点が異なります。
ただ、実質的に従来と同様の効果を持つ手法でありながら、課税回避のために別の手法を使っていると判断された場合、課税されるリスクはゼロではありません。税務調査が入ってみないと結果はわからないと思われます。







posted by Qさん at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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