2006年12月06日

メルシャンの売却の背景

M&Aというのは、決して派手でかっこいいものではない。
確かに動くお金の規模の大きさや、企業の経営権が移動するというインパクトの大きさでは、印象深い経済事象になりうる。
しかし、案件規模が大きければ大きいほど、利害関係者の目は厳しく光り、それぞれのエゴがぶつかり合う。例えば、企業経営が自らの生活の一部となっている経営者の場合だと、自らの人生がかかった決断になる。案件に関わる人それぞれの立場によって、全く意見が異なるので、「落としどころ」を見つけるのに相当な経験と能力を有する。

「落としどころ」を構成する要因も多岐にわたる。
譲渡する株式の比率や合併比率など、シェアに関わる問題、株価など経済的条件、企業を取り巻く外部環境・内部環境のタイミングなどなど、案件によって要因は増えたり減ったりする。

メルシャンの売却は、こういった「落としどころ」が、まさに今このタイミングで見えた案件だったと思う(エントリ後半の日経産業新聞の記事をご参考ください)。
食品業界に詳しい証券アナリストや投資銀行マンなら、メルシャンを大手酒造メーカーに売却することの合理性は理解できたし、それ故、皆が「狙っていた」案件だ。
しかし、いかに、いかなる点でもロジックが成立しても、ロジックだけでは「落としどころ」というのは見えてこないし、作れない。M&Aというのは、人の(良く言えば)心理、(悪く言えば)エゴというものが大きく影響する。
故に、M&Aは決してかっこいいものではないのである。






(参考:メルシャンの売却の記事)

メルシャン、キリンが友好的TOB ― 同根の味の素と決別
2006/11/17, 日経産業新聞, 24ページ

 キリンビールとメルシャンは十六日、キリンがメルシャン株の過半数を取得することで合意したと発表した。記者会見の席上、メルシャンの岡部有治社長(64)が「第二の創業」「新生メルシャン」という言葉を繰り返したのは、創業家が同じ鈴木家で筆頭株主、味の素への複雑な思いがあるからだ。自身の古巣でもある味の素とメルシャンの間に何があったのか。
 「メルシャンは連結子会社でもなければ持ち分法適用会社でもない。事業戦略上、何も関係ない。創業家が同じ“同根”会社というだけ」。味の素の江頭邦雄会長(69)は、メルシャンの話になると決まって不愉快な表情を浮かべる。
 M&A(企業の合併・買収)や不振事業の売却を積極展開し、リジンやスレオニンなどの食品や飼料、医薬品向けアミノ酸市場で世界トップシェアを握るまでに成長した味の素。業績低迷に悩むメルシャンは「売却対象」以外の何ものでもなかったからだ。
 それでもメルシャンを切り離せなかったのは、「同根」のしがらみからだ。味の素の創業者は初代鈴木三郎助の長男、二代目三郎助、メルシャンの前身、三楽は初代三郎助の二男、忠治が創業、いわば本家と分家に別れて味の素とメルシャンの経営に携わってきた。
 九七年の総会屋への利益供与事件後に社長に就任した江頭氏は、それまで誰も手をつけられなかった創業家を含む社長経験者の相談役や会長ら「長老」を排除。本家の四代目三郎助の息子、重利氏は常務執行役員にとどめ、取締役にも昇格させていない。一方、メルシャンには創業者の孫で、味の素副社長も務めた鈴木忠雄氏(76)が「メルシャンは家業」と言い、経営に参画してきた。
 そんな両社に転機が訪れたのは昨年十月。メルシャン内で内紛が起こる。経営改革を進めない首脳にしびれを切らした労働組合委員長や一部の役員が「株主提案を行使する」と賛同者を募った社内メールを流す。
 三月末に予定されていた株主総会までにこの“クーデター”を押さえ込むには、忠雄氏自身に突きつけられた「今年三月末に代表権のある会長から代表権のない取締役相談役に退き、〇七年三月末の任期満了をもって退任する」という条件をのむしか道はなかった。
 それまで最高経営責任者(CEO)で代表権のある会長だった忠雄氏は今年二月二十日に代表権のない取締役相談役に退き、来年三月末の退任を表明。岡部社長がCEOに就いた。この機会を味の素は逃さなかった。
 〇四年一月にメルシャン社長に就任して以来、岡部氏は東京・京橋の味の素本社に何度も江頭氏も訪れた。「味の素の食品とメルシャンの酒類事業で連携を深めてもらえないか」。だが「球団と酒はやらない」という固い意志を曲げない江頭氏の返事はつれない。
 岡部氏は今年正月には「味の素との決別」を決意。「投資ファンドに敵対的買収をしかけられぬとも限らない」との不安もよぎる。七月に「いい国内のパートナーと組む。味の素には頼らない」と漏らすようになっていた岡部氏はキリンの加藤壹康社長とひそかに業務・資本提携の話しを進め、九月下旬に江頭氏に決別の意を伝えた。
 江頭氏はこの時、味の素が保有する一二・八二%のメルシャン株をキリンが実施するTOB(株式公開買い付け)に応募して手放すことを了解したもよう。「味の素は同根だが、食品と酒類は近いようで遠かった」。十六日の記者会見で語った岡部氏の表情は晴れやかだった。






posted by Qさん at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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