2007年02月09日

エディオンとビックカメラの件

エディオンとビックカメラが資本提携を発表しました。
2年後をめどに経営統合するそうで・・・。
今年に入って家電量販店のM&Aとしては二件目ですが、
この前の件(エディオンとサンキュー)とは違って、
今回のM&Aはかなり裏事情があるかと思われます。

家電量販店の業界と言えば
ヤマダ電機を筆頭に、大手企業が日本全国のパイを奪おうと
出店やM&Aを盛んに行っています。
背景としては商品に差別化のポイントがなく
低価格でしか勝負できない状況となっており、
低価格を実現するにはメーカーに対する
バイイングパワー(購買力)を強化する必要があります。
バイイングパワーを強くするには仕入れの規模を多くすることが
大前提となり、そのため、全国各地に出店ラッシュをすることが
宿命になっている業界、それが家電量販店業界です。

サンキューの件はまさに、地方の企業の生き残り戦略のための
M&Aの色合いが強かったです。
典型的な家電量販店のM&A事例といえます。

一方、ビックカメラといえば・・・。
知っている方も多いかと思いますが、
ビックカメラは最近株式公開をしております。
株式公開をして、すぐにこういう話が出るということは
会社を売却することを前提として株式公開をしたと推察することができます。
ビックカメラは決して表には出てこないけど
政財界に対する力もあると言われている
カリスマオーナー新井氏が一代で大きくした会社です。
新井氏は今も創業者として株式の多くを保有しております。
またここ最近でビックカメラは新井氏は経営の第一線から
身を引いて代替わりを図っています。

株式公開をしたほうが、株価は高く評価される可能性が高いので、
株式公開をすることで、創業者利得をより大きくすることを狙い、
その裏で市場で一度に売却することが難しいオーナーの
保有株の現金化のために、M&Aの交渉をしていたという
見方ができるわけです。
そして、その下準備として、ワンマン経営の体制を改め、
代替わりを着々としていたということも、
この見方の論拠となるわけです。

もちろん、ビックカメラの将来性というのは決して
楽観視できないということも事業提携の裏にあるでしょうけど。
ビックカメラは主要都市の駅前の一等地に大箱で
出店をするという戦略をとっている代表的な会社ですが
いずれ出店余地はなくなるでしょうから、
いずれかのタイミングでビジネスモデルの転換が必要となっていたでしょう。
そのことは、ビックカメラが株式公開後、あまり
マーケットから評価されていなかったことからも明らかです。

というわけで、創業者利得の確保、企業としての成長戦略、
の二点でまとめられるわけですが、
裏がちょっとあったのではないかと推察できるM&Aですね。






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2007年02月08日

アサヒビールとカゴメの件

アサヒビールとカゴメが資本提携しましたね。

アサヒとしてはマジョリティを取りたかったところでしょうが、
マイノリティでも最低限のメリットを享受できると踏んだのでしょう。
健康食品に強い大手企業は業績が好調なところが多く、
なかなか提携が難しい状況の中で、
優良企業であるカゴメと組めたということは
アサヒビールにとっては間違いなくハッピーなはず。

一方、カゴメにとってはどうでしょう?
資金需要があったということですが、
相手として本当にアサヒビールでよかったのか、ということについて
もっと株主に対して納得できる説明が必要だと思います。
決してアサヒビールとの組み合わせが悪いと言っているのではないのですが、
アサヒビールと組む必然性がイマイチ見えてこないのは小生だけでしょうか・・・。
相手先企業の選定はカゴメの今後の展開に大きく影響を及ぼすので
株主への説明をきちんとしてほしいところです。

あと、カゴメといえば、「個人株主を安定株主にする」ということを
IR戦略としていましたが、本件によって、
その方針が転換したことは否めません。
この点についても、株主に対する説明がもっと必要かと思います。
安易な敵対的買収防衛ではカゴメの株主は納得しないでしょう。




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2007年02月01日

1月を振り返って

今年も1ヶ月が経ち、M&Aのニュースもいくつか出てきましたね。

大きな案件ではみずほ証券と新光証券の合併がありましたし、
三菱ウェルファーマと田辺製薬との合併の噂話(笑)、
山崎製パンによる不二家の支援など、今後まとまりそうな話もちらほら。
証券業界の再編や製薬業界の再編は、ずっと前から言われてきたことだし、
実際に行われてきたことなので、新聞報道以上に特筆すべきことはなさそうですね。

話は変わりますが、今年最初の日経新聞から確か三回連続で社説で
M&Aのことが取り上げられていましたね。
ずっと日経新聞を読んでいますが、こんなことは前代未聞です。
それだけ、M&Aが世間から注目を浴び、日本の各産業の
本格的な再編を誰もが感じているということの表れでしょう。

新聞の話といえば、小生が一番記憶に残っているのが、
1月16日の日経新聞の記事。
野村総合研究所による「M&Aに関する従業員意識調査」で、
M&Aを経験したことのある従業員は
敵対的買収に対しても約七割が肯定的という調査結果が出たとのことです。
野村総研の調査の詳細がよく分からないし、
「M&Aを経験したことのある従業員」というのが、
どちらの立場(Buy Side or Sell Side)で経験しているのかも
分からないので、何とも言えないところですが、
よく有識者が日本では敵対的買収は成り立ち得ないと主張する際の
一つの根拠に従業員の賛同を得られないということを挙げていることに対する
一つのアンチテーゼになるのかなぁと思いました。


というわけで、締りの無い終わり方ですが
1月の総論を締めくくります・・・。




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2006年12月06日

メルシャンの売却の背景

M&Aというのは、決して派手でかっこいいものではない。
確かに動くお金の規模の大きさや、企業の経営権が移動するというインパクトの大きさでは、印象深い経済事象になりうる。
しかし、案件規模が大きければ大きいほど、利害関係者の目は厳しく光り、それぞれのエゴがぶつかり合う。例えば、企業経営が自らの生活の一部となっている経営者の場合だと、自らの人生がかかった決断になる。案件に関わる人それぞれの立場によって、全く意見が異なるので、「落としどころ」を見つけるのに相当な経験と能力を有する。

「落としどころ」を構成する要因も多岐にわたる。
譲渡する株式の比率や合併比率など、シェアに関わる問題、株価など経済的条件、企業を取り巻く外部環境・内部環境のタイミングなどなど、案件によって要因は増えたり減ったりする。

メルシャンの売却は、こういった「落としどころ」が、まさに今このタイミングで見えた案件だったと思う(エントリ後半の日経産業新聞の記事をご参考ください)。
食品業界に詳しい証券アナリストや投資銀行マンなら、メルシャンを大手酒造メーカーに売却することの合理性は理解できたし、それ故、皆が「狙っていた」案件だ。
しかし、いかに、いかなる点でもロジックが成立しても、ロジックだけでは「落としどころ」というのは見えてこないし、作れない。M&Aというのは、人の(良く言えば)心理、(悪く言えば)エゴというものが大きく影響する。
故に、M&Aは決してかっこいいものではないのである。






(参考:メルシャンの売却の記事)

メルシャン、キリンが友好的TOB ― 同根の味の素と決別
2006/11/17, 日経産業新聞, 24ページ

 キリンビールとメルシャンは十六日、キリンがメルシャン株の過半数を取得することで合意したと発表した。記者会見の席上、メルシャンの岡部有治社長(64)が「第二の創業」「新生メルシャン」という言葉を繰り返したのは、創業家が同じ鈴木家で筆頭株主、味の素への複雑な思いがあるからだ。自身の古巣でもある味の素とメルシャンの間に何があったのか。
 「メルシャンは連結子会社でもなければ持ち分法適用会社でもない。事業戦略上、何も関係ない。創業家が同じ“同根”会社というだけ」。味の素の江頭邦雄会長(69)は、メルシャンの話になると決まって不愉快な表情を浮かべる。
 M&A(企業の合併・買収)や不振事業の売却を積極展開し、リジンやスレオニンなどの食品や飼料、医薬品向けアミノ酸市場で世界トップシェアを握るまでに成長した味の素。業績低迷に悩むメルシャンは「売却対象」以外の何ものでもなかったからだ。
 それでもメルシャンを切り離せなかったのは、「同根」のしがらみからだ。味の素の創業者は初代鈴木三郎助の長男、二代目三郎助、メルシャンの前身、三楽は初代三郎助の二男、忠治が創業、いわば本家と分家に別れて味の素とメルシャンの経営に携わってきた。
 九七年の総会屋への利益供与事件後に社長に就任した江頭氏は、それまで誰も手をつけられなかった創業家を含む社長経験者の相談役や会長ら「長老」を排除。本家の四代目三郎助の息子、重利氏は常務執行役員にとどめ、取締役にも昇格させていない。一方、メルシャンには創業者の孫で、味の素副社長も務めた鈴木忠雄氏(76)が「メルシャンは家業」と言い、経営に参画してきた。
 そんな両社に転機が訪れたのは昨年十月。メルシャン内で内紛が起こる。経営改革を進めない首脳にしびれを切らした労働組合委員長や一部の役員が「株主提案を行使する」と賛同者を募った社内メールを流す。
 三月末に予定されていた株主総会までにこの“クーデター”を押さえ込むには、忠雄氏自身に突きつけられた「今年三月末に代表権のある会長から代表権のない取締役相談役に退き、〇七年三月末の任期満了をもって退任する」という条件をのむしか道はなかった。
 それまで最高経営責任者(CEO)で代表権のある会長だった忠雄氏は今年二月二十日に代表権のない取締役相談役に退き、来年三月末の退任を表明。岡部社長がCEOに就いた。この機会を味の素は逃さなかった。
 〇四年一月にメルシャン社長に就任して以来、岡部氏は東京・京橋の味の素本社に何度も江頭氏も訪れた。「味の素の食品とメルシャンの酒類事業で連携を深めてもらえないか」。だが「球団と酒はやらない」という固い意志を曲げない江頭氏の返事はつれない。
 岡部氏は今年正月には「味の素との決別」を決意。「投資ファンドに敵対的買収をしかけられぬとも限らない」との不安もよぎる。七月に「いい国内のパートナーと組む。味の素には頼らない」と漏らすようになっていた岡部氏はキリンの加藤壹康社長とひそかに業務・資本提携の話しを進め、九月下旬に江頭氏に決別の意を伝えた。
 江頭氏はこの時、味の素が保有する一二・八二%のメルシャン株をキリンが実施するTOB(株式公開買い付け)に応募して手放すことを了解したもよう。「味の素は同根だが、食品と酒類は近いようで遠かった」。十六日の記者会見で語った岡部氏の表情は晴れやかだった。




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2006年11月29日

スティールパートナーズ、明星食品へのTOB失敗

大方の予想通り、スティールパートナーズによる明星食品の敵対的TOBが失敗しました。
TOBに失敗しても、本来の目的、すなわち「投資回収」には成功したといえるでしょう。
ファンドは投資に対するリターンをあげてナンボなので、スティールはこれで一件落着でしょう。

今日時点での新聞をざっと見ると、スティール側の視点での新聞記事ばかりでした。
同じものを書いても仕方ないし、これ以上議論の余地もないので
当事者の明星食品の視点にたって本件についてコメントします。


原点に返って明星食品がなぜ敵対的TOBをされたのか?を考えてみると
端的に表すなら、
株主の要求するリターンを生んでおらず、マーケットから評価されていなかったからです。

日清食品にとっては、全体の資産効率を下げる可能性が高い明星食品、
悪い言い方をするなら「お荷物」を抱えるわけなので、
当然、マーケットから明星食品とのシナジーを追求されるでしょう。

そこでまず考えられるのが、明星食品の資産効率を高めることです。
明星食品はスティールが株主に入った後、工場の統廃合をしていましたが、
日清食品の傘下に入ることで、再び工場の再編を余儀なくされるでしょう。
(日清食品の工場と重複する工場がいくつかあるでしょうから。)

さらには、不採算、あるいはノンコアの子会社群も売却しなければならないでしょう。
よく調べてみると明星食品の子会社には明らかに本業とシナジーが薄いノンコア事業の子会社があるからです(ここでは割愛します、調べてみると面白いですよ)。

もちろん日清食品もレピュテーションがあるので、
早急にリストラクチャリングをする可能性は低いですが、
中期的には手を打つでしょう。


日清食品の傘下に入ることで、明星食品のリストラクチャリングは
遅かれ早かれ進み、リストラクチャリングの対象となる
工場、事業、子会社に関わる仕事をしている従業員は
切り離されることになるわけです。
仮にスティールに買収されていたとしても、同じことになっていたでしょう。


やはり、経営陣の責任(むしろ罪か?)は大きいですね。
11月15日の日記で書いた通りですね。



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2006年11月28日

グッドウィルによるクリスタルの買収

今日は余談から。

このブログにはアクセスカウンターを置いていませんが
ブログの管理者ページにはアクセス数が毎日記録されています。
大した内容も書いていないのに、開設以来、今日で延べ2000人の方が
このブログを見てくださっているようです。
嬉しい限り^^

そんな中、一番アクセス数が多かった記事が
「グッドウィルによるクリスタルの買収」の記事です。

業界内でのインパクトがあること、案件サイズも比較的大きいこと、
小が大を飲んでいること、そして、何といっても裏がありそう(笑)なところ、が
関心の高さの原因となっているのでしょう。

本件について、色んなルートから裏情報を聞いたのですが、
若干公表してはまずそうなので、とりあえず、一般の人はあまり
手に取らないであろう「日経金融新聞」と「日経産業新聞」の記事を抜粋します。

これだけでも十分参考になるかと思います。


P.S.これからも皆さんのニーズの高い分野を扱いたいと思いますので
    リクエスト等ございましたら、お気軽にコメントをください。
    なお、トラックバックも歓迎しております。
    今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。



■2006/11/28, 日経金融新聞, 5ページ
「クリスタル買収、グッドウィル手法に波紋、市場、経緯など不可解。」

 グッドウィル・グループ(4723)が、人材派遣サービス大手のクリスタルを子会社化したことを巡って、波紋が広がっている。小が大をのみ込む形の買収に、業容拡大期待から歓迎する向きがある一方、二つの投資事業組合をかませた買収の経緯に首をかしげる市場関係者も少なくない。グッドウィルは二十二日に子会社化した時期を訂正するなど、不可解な点も残されている。
 「なぜグッドウィルの人間が現れるんだ」。クリスタルの幹部は今月十七日、新しい取締役として乗り込んできたグッドウィルの折口雅博会長を見て驚いた。買収公表の前日に当たったこの日、クリスタルの幹部は初めてグッドウィルに買収されたことを知った。
 グッドウィルがクリスタル株を間接的に取得して経営権を握ったのは十月三十一日。だが、グッドウィルはその後二週間以上も買収の事実を明らかにしなかった。
 グッドウィルは当初、クリスタルに過半の取締役(六人)を送り込んだ十七日を子会社化の日と発表した。だが実際はグッドウィルが一〇〇%出資して十月三十一日に設立した「人材サービスファンド」は、同じ日に別の投資事業組合に七四・四五%出資。そこがクリスタル株の九〇・九二%を取得している。東証からの指摘を受けて買収日を訂正しているが、結果的に二つのファンドを介したことで、買収の事実をクリスタル側に隠すことに成功した。
 その背景にはクリスタル株の九割近くを保有していた林純一元会長の意向がある。林元会長は十月三十日、ファンドへの株売却を決め契約を結んだが、その際の条件は「同業他社には株を売らないこと」だった。従業員の雇用を維持し、上場を目指してほしかった。元会長にとってグッドウィルのクリスタル買収はまさに寝耳に水だった。
 しかも、グッドウィル側は買収額を八百八十三億円としているが、投資事業組合が林元会長らに払ったのは約五百億円。売却を急いでいた元会長は、クリスタルの純資産額(七百九十一億円)より大幅に安い値段で手放すことに同意したが、グッドウィルの公表出資額との間には三百億以上の開きがある。
 クリスタルは連結売上高五千九百十一億円(二〇〇六年三月期)を誇る人材派遣大手。グッドウィルは二十八日に投資家向け説明会を開催し、買収の詳細を発表するとしているが、林会長の怒りは当分収まりそうにない。


■2006/11/24, 日経産業新聞, 24ページ
「コンプライアンス・リスク(眼光紙背)」

 大型のM&A(企業の合併・買収)が相変わらず証券市場をにぎわせている。最近興味を引かれたのは、人材派遣・介護事業大手グッドウィル・グループによる業務請負最大手クリスタル(京都市)の買収。グッドウィルにとって、クリスタルは連結売上高で三・二倍、従業員数で十二倍の規模を持つ。しかもクリスタルは赤字会社ではなく、二〇〇六年三月期の最終損益は二百十五億円の黒字。こんな会社の経営権を八百八十三億円で手に入れたのだから、買収発表直後からグッドウィルの株価が大幅に上昇しているのも無理はない。
 ただ先行きは楽観できない。クリスタルは度重なる「偽装請負」で十月に系列会社が労働者派遣法に基づく初の事業停止命令を受けるなど強引な商法が物議をかもしてきたほか、ネガティブな記事を掲載した報道機関を相手に巨額の賠償訴訟を起こす強面(こわもて)ぶりでも知られた。創業者の元社長が保有株の大半を手放すことになったのも、不祥事の頻発で金融機関に信用不安が広がったのが一因といわれる。
 実は、親会社になるグッドウィルも「偽装請負」を繰り返し、昨年六月に労働者派遣法による事業改善命令を受けた過去がある。今回の買収について市場関係者の間には「コンプライアンス(法令順守)面のリスクを注視すべき」との声も出始めている。M&Aの正当な評価を下すには、まだ時間がかかりそうだ。





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2006年11月25日

税制改正後のMBOスキーム

告知した通り、税制改正後のMBOスキームについてまとめます。

以前のエントリでMBOの際にTOBの後、完全子会社化するスキームで税制改正により産業活力再生特別措置法(以下、産業活力再生法)を使わなくなると書きました。
ではどうなるのか?ということまではあまり書いていなかったので、いくつか事例が出てきたし、これを機会にまとめておこうかと思います。

結論からいうと、手法は二つ。特にスキームの名前があるわけではないのですが、便宜的に名前をつけると
@端数株式交付方式
A全部取得条項付種類株式交付方式

@は東芝セラミックスのMBO、キューサイのMBOで用いられた手法、
Aはレックス・ホールディングスのMBOで用いられた手法です。

さて、少し話がながくなりそうなので、目次をつけて説明します。流れは下記の通りです。
1.税制改正で何が問題となったのか
2.@、Aの手法についての詳細
3.補足


1.税制改正で何が問題とあったのか
MBOではTOB(株式公開買い付け)後に完全子会社化するため、現金を対価とした株式交換で少数株主を締め出す方法が主流でした。しかし今年度の株式交換・移転税制の改正(2006年10月1日以降適用)により、従来の手法で実施した場合は税負担が発生することになりなりました。税負担が発生すれば買収価格にも影響するので、MBOの実現ハードルが上がることになります。そこで課税を回避する必要性が出てきたのです。

税制改正前の具体例を示しますと、ポッカコーポレーションやすかいらーくの事例では、産業活力再生法を用いていました。すなわち、まず経営陣やファンドが特別目的会社(SPC)を設立し、SPCがTOBで対象会社の発行済み株式の3分の2超を取得し、その後に産業活力再生法を使って現金を対価とした株式交換で少数株主を追い出し完全子会社化していました。

しかし税制改正で株式交換・移転税制が組織再編税制に一本化されたことで、少数株主に対して現金など買収者の株式以外を対価とする株式交換を実施した場合、買収対象会社の資産に一定以上の含み益があれば、評価損益に対する税負担が発生することとなり(具体的には具体的には土地や有価証券などの資産を時価評価し、含み益と事業活動で得られた利益と合算。そこから会計上の収益・費用と税制上の益金・損金の差を調整し、課税対象となる所得を計算。法人税などを課税する)、課税を回避する必要性が出てきたわけです。仮に期間利益が赤字でも含み益で黒字になり、税金を払わなければならない場合もでてくるでしょう。また資産を売却せず、キャッシュが入らない状況で税金だけ支払うこともあるでしょう。多くの含み益を持つ企業にとってはMBOというスキーム自体を再考せざるを得ない可能性があるわけです。


2.@、Aの手法についての詳細
@端数株式交付方式
10月2日に発表したキューサイと、10月31日に発表した東芝セラミックスのMBOで用いられたスキームです。
SPCが買収対象会社の株式の3分の2超をTOBで取得するところまでは従来と同じで、違うのはは株式交換の際に現金ではなくSPCの株式を交付する点です。この際に株式交換比率を調整し、少数株主には1株に満たない端数株式を交付し、その後にSPCが端数株式を現金で買い取ります。この方式なら、株式交換の際に少数株主に交付するのはあくまでもSPCの株式なので、税制改正の影響を受けないとみられています。

A全部取得条項付種類株式交付方式
11月10日に発表されたレックス・ホールディングスのMBOで用いられたスキームです。
SPCがレックスHDの株式をTOBで取得するところまでは同じ。違うのは、TOB後に株主総会でレックスHDを種類株式発行会社に変更し、発行済み普通株式に全部取得条項を付ける点です。この条項があれば会社は株主の同意なしに自社株式をすべて取得できるため、株式の全部取得と引き換えに、株主に別のレックスHD株を交付。このとき、少数株主には1株に満たない端数株式が交付されるよう単元を調整し、最後に現金で少数株主から端数株式を買い取り完全子会社化します。なお、この方法では合併や株式交換を使っておらず組織再編税制の枠組みから外れます。


3.補足
代替手法はいずれも最終的に端数株式を使って少数株主に現金を交付する点は同じですが、一方は株式交換という方法で少数株主にSPCの株式を交付、もう一方は全部取得条項付種類株式という手法で買収対象会社の株式を交付するという点が異なります。
ただ、実質的に従来と同様の効果を持つ手法でありながら、課税回避のために別の手法を使っていると判断された場合、課税されるリスクはゼロではありません。税務調査が入ってみないと結果はわからないと思われます。





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2006年11月19日

スティール・パートナーズと日清食品と明星食品

明星食品について、日経新聞の情報が出てきたのでまとめておこうと思う。

(明星食品が日清食品に売却を決めた裏側)
・そもそも明星食品の永野社長は当初全く日清食品への売却を考えていなかった。
・しかし、スティール・パートナーズへの対応策は社内でどんなに議論しても結論が出なかった。
・そんな中、永野社長に決断を日清との提携を迫ったのがアドバイザーの三菱UFJ証券。資金力やブランド力を備えた最も有力な同業者をホワイトナイトにさせるのが、三菱UFJ証券が当初から描いていたシナリオ。
・日清食品との提携については、社内では当然反発があった。
・永野社長は15日の週の頭に、スティールとの首脳と会談し、日清との提携を仄めかし、スティールが株を売却しないか打診したが、スティールは断った。
・以上の経緯があり、明星食品が日清食品に相談したのはスティール・パートナーズがTOBを表明して約一週間後となった。(以上、日経新聞11/16号より)


いずれにせよ、現在ボールはスティール側にあり、次の一手で今後の展開の大筋が決まるでしょう。次の一手は@日清食品のTOB提案に応じるA日清食品に対抗し、TOB価格を上げる、の二通りに集約されますが、恐らく@の方向になるでしょう。スティールとしては、投資回収が最優先事項であり、日清が提示したTOB価格は投資回収の点で、悪くない水準だからです。
明星食品に揺さぶりをかけ、再編の流れを作り、株価が上昇した時点で持ち株を売り抜ける、というのが恐らくスティールの狙いだったのでしょう。ちなみにスティールは日清食品の株も6%程度保有しています。抜け目ないですね。

スティールが今回の件を仕掛けた背景には、同社の運用利回りが10%を大きく下回っているとの噂があるのですが、それと関連しているのだと思います。



ラベル:敵対的TOB
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グッドウィルがクリスタルを買収

人材業界でビッグなM&Aニュースがありました。

「グッドウィルがクリスタルを買収」

案件の概要は
・グッドウィルが100%出資している投資ファンドを通じてクリスタルの発行済株式の67%を取得。
・買収金額は880億円
・グッドウィルがクリスタルに6人の取締役を派遣。クリスタルの取締役の過半数を占めることとなった。


驚くべき点は3点。

一点目は小が大を飲み込んだこと。直近期の売上高はグッドウィルが1,859億円なのに対し、クリスタルは5,911億円。本件により、グッドウィルの売上規模は4倍になる。

二点目は買収金額。手法としてはLBOなのでしょうか。詳細は不明ですが、現在、事業停止命令を受けているクリスタルを大金を注ぎ込んで買収するのは、それなりのリスクがあるはず。思い切った決断です。

三点目はクリスタルが売却を決断したこと。クリスタルといえば、コテコテのオーナー会社で、色んな雑誌で取り上げられていたけど、何でもかんでもM&Aしてきた会社です。そんな会社が売却に踏み切ったのは驚きです。事業停止命令が余程痛かったのでしょうか。


情報が少ないので何とも判断できないところなのですが、人材業界史上、最もインパクトのあるニュースでしょう。



ラベル:業界再編
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2006年11月17日

(早くも決定w)今週のM&A大賞 〜キリンビール&メルシャン

まだ木曜だけど今週は結構色んなM&Aのニュースがありましたね。
本当は、一昨日くらいにあったホンダがM&Aした案件をとりあげたかったんだけど、今のところ一日一件記事を投稿するのが限界なので、置き去りのまま・・・。今日こそは自動車業界の今後についてM&A的観点から書きたかったけど、「麒麟麦酒(以下キリンビール)によるメルシャンの買収」のニュースが入ってきてしまって、またホンダのニュースは放置プレイです。


そんなわけで、今日は表題のキリンビールとメルシャンの件について。
このニュースはなかなかセンセーショナルだったので、
今週のM&A大賞を授けたいと思います(ちなみにこの賞は不定期ですw)。

先週の日清食品のケースといい、今回のキリンのケースといい、なかなかM&Aが起きにくい食品メーカー間でのM&A、しかも業界再編につながりそうな案件が毎週起きていて、産業界にとっても日常生活においても、刺激的な状況が続いています。

そもそも今回買収されたメルシャンも明星食品とともに如何ともし難い状況にある企業でした。そもそも食品メーカーは超トップ企業以外は、低成長、低PBRの代表銘柄がたくさんあります。ずっとそんな状況が続いていたのに、立て続けにこういう事例が起きて、本当に時代は変わったと思います。

食品メーカーが何故低成長かというと、詰まるところ、国内マーケットの飽和に尽きます。少子高齢化に象徴される消費者の構造が大きく変化しており、商品の差別化も難しい業界なので企業の努力では如何ともし難い状況なのです。
したがって、現在有望な食品メーカーといえば海外マーケットに強い味の素、日清食品など一部の企業に限定されるわけです。ちなみに大手ビールメーカー各社が海外のビールメーカを積極的に買収しているのも、海外マーケットにしか本業の成長活路が見出せないためといえます。

国内のアルコールマーケットにフォーカスすると、数年前までの焼酎ブームでしばらく焼酎事業を営む会社は追い風が吹いていましたが、今は一段落した模様です。ビール・発泡酒は定期的に新聞で取り上げられていますが、厳しい状況が続いています。その他ワイン・日本酒・ウィスキーは人気・需要ともにずっと低迷しています。大手のメルシャンでも厳しい状況が続いていました。

大手のビールメーカーは前述の通り、本業では海外マーケットでしか成長余力がないため、その他の成長戦略としては本業以外の分野での買収(例えばアサヒビールによるベビーフードメーカー大手の和光堂の買収)をすることで、成長の柱を新たに創らざるを得ない状況となっています。

今回のキリンビールによるメルシャンの買収は買手・売手双方の切迫した状況によって生まれた案件といえるでしょう。



ラベル:TOB 業界再編
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2006年11月15日

明星食品vsスティール・パートナーズ

「明星食品vsスティール・パートナーズ」

「vs」のカタチになるまでが長かったですね。
明星食品は数年前からスティールや村上ファンドに株を買われていて、
ご他聞に漏れず、村上氏にはコテンパンにやられていたようですが、
スティールとは比較的良好な関係を保っていたようです。

村上氏が消えて、安心していたところ、まさに隙をつかれた形となったのではないかと思います。あくまで「経営陣」の視点からの意見ですけど。

ファンドに株を買われてから、一体この会社は何をしてきたのでしょうと、
株主でなくても、この会社のここ数年の経営を見てるとツッコミたくなります。

ファンドが株主に登場した後も、キャッシュリッチで低PBRという、まさにファンドが敵対的買収をしかける対象となりうる状態が続いていたわけです。
この間に、明星が取り組んだことといえば、工場の統廃合ぐらい。
こんなこと、どんなメーカーでも取り組んでいます。
株式市場に、何をアピールしてきたのでしょう。
抜本的なリストラを恐れて、何もできずにいた結果、
我慢の限界に来たスティールが今回の行動に出たというのが本件の裏側でしょう。
仮に、明星が問題意識をもって、株価対策をしていれば、
株価が一定のレベルにまで上がったところでスティールは売却していたでしょうから。

何の改革もせずに、スティールからの具体的なアプローチがないからといって
あぐらをかいていた経営陣の資質を疑いたくなります。
しかも、スティールの提案を「メリットがない」と一蹴して
ライバルの日清食品に安易に助けを求めに行く姿は経営陣のプライドも疑いたくなります。
業界も成長が見込めず、通常のキャッシュフローの枠を超えるような大規模な投資ない会社だと思うので、MBOという選択はスティールが提案せずとも自然な流れではないのでしょうか。
日清食品の傘下に入ることによるシナジーがどうも見えてこないのも問題です。

いずれにせよ、組織風土が全然違う日清食品の傘下に入れば、明星食品の従業員は間違いなく日清食品の従業員の勢力に押されるて、惨めな思いをすることでしょう。

明星食品は最初にファンドが株主に登場してから、経営努力を行った結果、株主だけではなく、従業員をも不幸にしたと言われても仕方がないと思います。
まぁ、もっとも今回のTOBで株主は救われたわけですけど。



ラベル:敵対的TOB
posted by Qさん at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月14日

レックスHDのMBOの背景にあるもの

「牛角」で有名なレックス・ホールディングス(以下、レックスHD)がMBOを発表しました。
レックスHDといえば、カリスマ西山社長が三軒茶屋で牛角を興し、その後、FC展開やM&Aによって業績を急拡大した、外食企業を代表する有力企業でした。

MBOの理由をいくつか会見で挙げていましたが、要するに規模の急拡大に社内の組織体制が追いつかなかった、ということのようです。

これをカリスマ社長による経営の限界、と言ってしまうのは早計でしょう。

外食企業は実は日本で最もM&Aが起きている業界の一つです。
レックスHDをはじめ上場外食企業では「すき家」のゼンショー、「甘太郎」のコロワイド、「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトが最近5年間内に激しいM&A合戦を展開しています。

なぜ、外食業界でM&Aが活発に起きているのか?
理由は下記の4点に集約されるます。
@市場が縮小しており、シェア拡大のためには自社で店舗を立ち上げるより、店舗網が既に出来上がっている同業企業を買収した方が成長が早い
Aスケールメリット(規模の経済)が働く業界である
Bブランドのライフサイクルが短い
Cデフレを脱したものの、消費者は価格に対して依然敏感である

それぞれの理由の背景は後日別途まとめるとして、以上のような必然性・緊急性が大手外食企業、とりわけ株主へ成長戦略を説明する責任を負う上場企業を突き動かす訳です。
上場した外食企業にとってM&Aをすることはいわば宿命。

その一方で、外食業界は数十年前まで、世間的には「水商売」とも看做されることがあり、例えば創業間もない飲食店は満足に銀行の融資を受けられない時代もありました。
多少環境が改善されてきたとはいえ、現在でも外食業界に集まる人材は正社員であっても元フリーターでそのまま就職した人や、他の業界でドロップアウトした人などがほとんどであり、子会社の経営や店舗運営など、組織運営を取り仕切れる人は少ない状況です。
さらには、景気の回復による、人材獲得の競争が激化しており、他の業界と比べて労働条件が相対的に悪い外食業界は人材確保が難しくなっています。


これで冒頭書いた、規模の拡大と自社の能力のバランスを見誤ったのはカリスマ社長が原因とすることは早計だということが少しお分かりいただけたのではないかと思います。

外食企業の成長には宿命づけられている規模の拡大と同時に、組織力の強化が
課題となるケースは今後も外食業界で増えてくると思います。外食企業の組織力の向上のためには、外食業界自体の地位向上による優秀な人材の確保が不可欠です。規模の拡大と組織力のバランスが保てなければ、いずれ企業に問題が生じ、抜本的な改革が必要となります。上場企業のままでは思い切った構造改革ができないのも事実です。

外食上場企業のMBOは今後も十分に起こりうるテーマだと思います。


《ご参考:レックスのMBO概要》
○アドバンテッジパートナーズが設立する特別目的会社(SPC)がTOB(株式公開買い付け)でレックスHD株取得。TOB成立後、西山氏がSPCに33%出資
○1株あたり買い付け価格は23万円
○買い付け期間は11月11日から12月12日まで。買収総額は約615億円
○来年2月めどにレックスHDの上場廃止
○MBO成立後、西山氏は会長に



posted by Qさん at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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