2006年11月17日

(早くも決定w)今週のM&A大賞 〜キリンビール&メルシャン

まだ木曜だけど今週は結構色んなM&Aのニュースがありましたね。
本当は、一昨日くらいにあったホンダがM&Aした案件をとりあげたかったんだけど、今のところ一日一件記事を投稿するのが限界なので、置き去りのまま・・・。今日こそは自動車業界の今後についてM&A的観点から書きたかったけど、「麒麟麦酒(以下キリンビール)によるメルシャンの買収」のニュースが入ってきてしまって、またホンダのニュースは放置プレイです。


そんなわけで、今日は表題のキリンビールとメルシャンの件について。
このニュースはなかなかセンセーショナルだったので、
今週のM&A大賞を授けたいと思います(ちなみにこの賞は不定期ですw)。

先週の日清食品のケースといい、今回のキリンのケースといい、なかなかM&Aが起きにくい食品メーカー間でのM&A、しかも業界再編につながりそうな案件が毎週起きていて、産業界にとっても日常生活においても、刺激的な状況が続いています。

そもそも今回買収されたメルシャンも明星食品とともに如何ともし難い状況にある企業でした。そもそも食品メーカーは超トップ企業以外は、低成長、低PBRの代表銘柄がたくさんあります。ずっとそんな状況が続いていたのに、立て続けにこういう事例が起きて、本当に時代は変わったと思います。

食品メーカーが何故低成長かというと、詰まるところ、国内マーケットの飽和に尽きます。少子高齢化に象徴される消費者の構造が大きく変化しており、商品の差別化も難しい業界なので企業の努力では如何ともし難い状況なのです。
したがって、現在有望な食品メーカーといえば海外マーケットに強い味の素、日清食品など一部の企業に限定されるわけです。ちなみに大手ビールメーカー各社が海外のビールメーカを積極的に買収しているのも、海外マーケットにしか本業の成長活路が見出せないためといえます。

国内のアルコールマーケットにフォーカスすると、数年前までの焼酎ブームでしばらく焼酎事業を営む会社は追い風が吹いていましたが、今は一段落した模様です。ビール・発泡酒は定期的に新聞で取り上げられていますが、厳しい状況が続いています。その他ワイン・日本酒・ウィスキーは人気・需要ともにずっと低迷しています。大手のメルシャンでも厳しい状況が続いていました。

大手のビールメーカーは前述の通り、本業では海外マーケットでしか成長余力がないため、その他の成長戦略としては本業以外の分野での買収(例えばアサヒビールによるベビーフードメーカー大手の和光堂の買収)をすることで、成長の柱を新たに創らざるを得ない状況となっています。

今回のキリンビールによるメルシャンの買収は買手・売手双方の切迫した状況によって生まれた案件といえるでしょう。





ラベル:TOB 業界再編
posted by Qさん at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月15日

明星食品vsスティール・パートナーズ

「明星食品vsスティール・パートナーズ」

「vs」のカタチになるまでが長かったですね。
明星食品は数年前からスティールや村上ファンドに株を買われていて、
ご他聞に漏れず、村上氏にはコテンパンにやられていたようですが、
スティールとは比較的良好な関係を保っていたようです。

村上氏が消えて、安心していたところ、まさに隙をつかれた形となったのではないかと思います。あくまで「経営陣」の視点からの意見ですけど。

ファンドに株を買われてから、一体この会社は何をしてきたのでしょうと、
株主でなくても、この会社のここ数年の経営を見てるとツッコミたくなります。

ファンドが株主に登場した後も、キャッシュリッチで低PBRという、まさにファンドが敵対的買収をしかける対象となりうる状態が続いていたわけです。
この間に、明星が取り組んだことといえば、工場の統廃合ぐらい。
こんなこと、どんなメーカーでも取り組んでいます。
株式市場に、何をアピールしてきたのでしょう。
抜本的なリストラを恐れて、何もできずにいた結果、
我慢の限界に来たスティールが今回の行動に出たというのが本件の裏側でしょう。
仮に、明星が問題意識をもって、株価対策をしていれば、
株価が一定のレベルにまで上がったところでスティールは売却していたでしょうから。

何の改革もせずに、スティールからの具体的なアプローチがないからといって
あぐらをかいていた経営陣の資質を疑いたくなります。
しかも、スティールの提案を「メリットがない」と一蹴して
ライバルの日清食品に安易に助けを求めに行く姿は経営陣のプライドも疑いたくなります。
業界も成長が見込めず、通常のキャッシュフローの枠を超えるような大規模な投資ない会社だと思うので、MBOという選択はスティールが提案せずとも自然な流れではないのでしょうか。
日清食品の傘下に入ることによるシナジーがどうも見えてこないのも問題です。

いずれにせよ、組織風土が全然違う日清食品の傘下に入れば、明星食品の従業員は間違いなく日清食品の従業員の勢力に押されるて、惨めな思いをすることでしょう。

明星食品は最初にファンドが株主に登場してから、経営努力を行った結果、株主だけではなく、従業員をも不幸にしたと言われても仕方がないと思います。
まぁ、もっとも今回のTOBで株主は救われたわけですけど。



ラベル:敵対的TOB
posted by Qさん at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月14日

レックスHDのMBOの背景にあるもの

「牛角」で有名なレックス・ホールディングス(以下、レックスHD)がMBOを発表しました。
レックスHDといえば、カリスマ西山社長が三軒茶屋で牛角を興し、その後、FC展開やM&Aによって業績を急拡大した、外食企業を代表する有力企業でした。

MBOの理由をいくつか会見で挙げていましたが、要するに規模の急拡大に社内の組織体制が追いつかなかった、ということのようです。

これをカリスマ社長による経営の限界、と言ってしまうのは早計でしょう。

外食企業は実は日本で最もM&Aが起きている業界の一つです。
レックスHDをはじめ上場外食企業では「すき家」のゼンショー、「甘太郎」のコロワイド、「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトが最近5年間内に激しいM&A合戦を展開しています。

なぜ、外食業界でM&Aが活発に起きているのか?
理由は下記の4点に集約されるます。
@市場が縮小しており、シェア拡大のためには自社で店舗を立ち上げるより、店舗網が既に出来上がっている同業企業を買収した方が成長が早い
Aスケールメリット(規模の経済)が働く業界である
Bブランドのライフサイクルが短い
Cデフレを脱したものの、消費者は価格に対して依然敏感である

それぞれの理由の背景は後日別途まとめるとして、以上のような必然性・緊急性が大手外食企業、とりわけ株主へ成長戦略を説明する責任を負う上場企業を突き動かす訳です。
上場した外食企業にとってM&Aをすることはいわば宿命。

その一方で、外食業界は数十年前まで、世間的には「水商売」とも看做されることがあり、例えば創業間もない飲食店は満足に銀行の融資を受けられない時代もありました。
多少環境が改善されてきたとはいえ、現在でも外食業界に集まる人材は正社員であっても元フリーターでそのまま就職した人や、他の業界でドロップアウトした人などがほとんどであり、子会社の経営や店舗運営など、組織運営を取り仕切れる人は少ない状況です。
さらには、景気の回復による、人材獲得の競争が激化しており、他の業界と比べて労働条件が相対的に悪い外食業界は人材確保が難しくなっています。


これで冒頭書いた、規模の拡大と自社の能力のバランスを見誤ったのはカリスマ社長が原因とすることは早計だということが少しお分かりいただけたのではないかと思います。

外食企業の成長には宿命づけられている規模の拡大と同時に、組織力の強化が
課題となるケースは今後も外食業界で増えてくると思います。外食企業の組織力の向上のためには、外食業界自体の地位向上による優秀な人材の確保が不可欠です。規模の拡大と組織力のバランスが保てなければ、いずれ企業に問題が生じ、抜本的な改革が必要となります。上場企業のままでは思い切った構造改革ができないのも事実です。

外食上場企業のMBOは今後も十分に起こりうるテーマだと思います。


《ご参考:レックスのMBO概要》
○アドバンテッジパートナーズが設立する特別目的会社(SPC)がTOB(株式公開買い付け)でレックスHD株取得。TOB成立後、西山氏がSPCに33%出資
○1株あたり買い付け価格は23万円
○買い付け期間は11月11日から12月12日まで。買収総額は約615億円
○来年2月めどにレックスHDの上場廃止
○MBO成立後、西山氏は会長に



posted by Qさん at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースの考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

MBO-末席重役の決断 (本の紹介)

この本は面白い構成で、二部構成になっています。
前半は特に企業再生に強いと評判の弁護士・藤原総一郎先生によるM&AおよびMBOの概説、後半は老舗人材紹介会社のケンブリッジ・リサーチ研究所の代表取締役・橋本寿幸社長が実行したMBOのドキュメントとなっています。

MBOについて知りたいという人なら、正直なところ後半部分は不要です。ストーリー自体は決して小説のように面白みのあるものではありませんので。
ただM&Aの仕事をして実際に起こりうる局面というのがあちらこちらに散りばめられており、生々しいストーリーだと思います。
(M&A業務に関わったことがない人が読むと新鮮で面白いストーリーに感じるかもしれません)

以下、一部、二部の順に簡単に解説します。

■一部
・最近になってMBOが活発に行われていますが、実はMBOに関する書籍は少ないのが現状です。そういった事情と藤原先生の端的な解説もあり、貴重な本だと思います。「M&Aとは何か」ということも含めて初めて学ぶ人でも分かりやすく丁寧にまとめられています。
・ただ気をつけなければならないのは、法改正にともない、本書で取り上げられているポッカやワールドのケースのような産業活力再生特別措置法の利用が現在では実質的に用いられない点です。
・ご参考までに、直近のMBO事例の東芝セラミックスやレックスホールディングスでは、産業活力再生特別措置法を適用せず、端株を用いて、持株会社が対象会社を100%子会社化しています。

■二部
・老舗の人材紹介会社に転職した橋本氏がMBOを実行していく様子が描かれています。
・老舗とはいえ、その当時の同社は経営者の責任で沈没寸前となっていました。そこで橋本氏が社長に大抜擢され、悩みぬいた末にMBOという結論を導きます。
・オーナーとの対峙・交渉、協力者の裏切りなど、文書化すると比較的よくある話だと思ってしまいがちですが、よくここまで赤裸々に執筆されたなぁと感心しました。
・同時に橋本社長の人生観のようなものが随所に書き表されており、読み進めていくうちに橋本氏個人にも興味が湧いてきます。




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[著者] 橋本 寿幸稲生 隆浩藤原 総一郎
[種類] 単行本
[発売日] 2005-10
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posted by Qさん at 18:26| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめ書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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